【看護の現場】食中毒の種類と原因別の治療方法
食べ物が原因で腹痛や嘔吐が起こることを食中毒といいます。比較的身近な救急疾患ですが、原因になる食べ物や菌によって、対応が異なります。知っているようで知らない食中毒についてまとめてみました。
食中毒の原因食品と起炎菌
火が十分通っていないものや、調理から時間がたって食べるものが原因になることが多いです。
生焼けの鶏肉や生卵によるサルモネラ菌中毒は頻度の高い食中毒です。生焼けの鶏肉は、カンピロバクターという菌による食中毒の原因にもなり得ます。
この菌は、生の肉や生乳に含まれています。お寿司やお刺身など、生の魚介類は腸炎ビブリオ菌中毒の原因になります。
生カキに含まれるノロウイルスは冬に流行する感染性胃腸炎の原因ウイルスの代表です。介護施設などで発生すると、抵抗力の弱っている人の間で集団感染を引き起こします。
人が直接手を触れて調理するおにぎりや仕出し弁当などでは黄色ブドウ球菌の食中毒が度々発生します。
黄色ブドウ球菌は多くの人が持っている常在菌ですが、高温多湿の条件で増殖するので、食材の冷蔵管理が不十分だとリスクが高くなります。
ボツリヌス菌は土壌に含まれている嫌気性の菌で、加熱の不十分な真空パックや缶詰の中で増殖することがあります。
食中毒の治療
食中毒の主な症状は下痢や腹痛なので、脱水症状が起こらないようにするのが基本です。
経口摂取ができる場合はスポーツドリンクなどを飲んでもらい、難しい場合や脱水が進んでいる場合は点滴を行います。
注意したいのは、下痢止めは原則使わないということです。下痢止めは、腸の動きを抑制するものです。
細菌やウイルスが増殖している腸の動きを止めてしまうと、腸の中でさらに病原体が増えてしまいます。下痢や嘔吐は細菌やウイルスを外に出そうとする防御反応なので、薬で抑えることは避けます。
感染症状が強い時には抗菌薬を使いますが、ウイルスには効果がありません。細菌が原因の場合でも、毒素型の食中毒だと意味が無かったり、逆効果になったりする場合もあります。
感染型と毒素型
毒素型の食中毒、とはどういうことでしょうか。
食中毒は、原因によって大きく2つに分けられます。菌が増殖することが直接の原因になる感染型(細胞侵入型)と、菌が食品内で産生する毒素が原因になる毒素型です。
毒素型の食中毒に抗菌薬を使用すると、効果がない上に、腸内細菌のバランスを壊したり、耐性菌を発生させたりすることになります。
感染型の食中毒は体の中で細菌が増殖するので、症状が出るまでに時間がかかります。これに対し毒素型はあらかじめ毒素が食品の中で作られているので、食べるとすぐに症状が出ます。
感染型は発熱しますが、毒素型はあまり高い熱が出ないということも覚えておきましょう。
感染型の起炎菌にはサルモネラ、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、腸管出血性大腸菌などがあり、生の食品の中で増殖するものが多いです。
毒素型は黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌などで、仕出し弁当や缶詰といった加工食品の中で増殖し、毒素を生成します。
最後に
いかがでしたか?食中毒についてまとめてみました。脱水症状を防ぐため、水分を摂取してもらうことが何より大切です。
食中毒に感染型と毒素型があり、どちらかで症状や潜伏期間、抗菌薬の使用の可否が分かれるということは知らない人も多かったのではないでしょうか。この機会に確認しておいてくださいね。