看護師が防ぐ!人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防のケアとは
人工呼吸装着が原因で起こる感染症を人工呼吸器関連肺炎(VAP:Ventilator Associated Pneumonia)と言います。
患者さんの命を救うため、回復のために取り付けた人工呼吸器が原因で肺炎を起こしてしまう、いわゆる医原性(医療が原因で起こる)感染症です。
人工呼吸器患者さんを看護する上で、このVAPを予防する大切なポイントがあります。看護師が防ぐ人工呼吸器関連肺炎(VAP)予防、必見です!
人工呼吸器関連肺炎(VAP)とは?きちんと解説します
入院時、気管挿管時には肺炎がなく、気管挿管を行い、人工呼吸管理開始後48~72時間以降に発症する肺炎を、人工呼吸器関連肺炎と言います。
肺炎が原因で気管内挿管、人工呼吸器管理となった場合は該当しません。
死亡率は30~76%と報告されています。人工呼吸器関連肺炎が起こっていないか?どのくらいの頻度で起こっているか?は院内感染対策チームによる監視と分析が行われます。
人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発生原因と看護
その1 誤嚥により気管内に菌が入り発生
挿管時に口腔内に食物のカスが残っていたり、痰がこびりついていると、挿管チューブとともにそれら雑菌の温床を気管内や肺に押し込んでしまい、肺炎の原因になります。
挿管後も唾液、鼻腔・副鼻腔分泌物が気管内チューブを伝わって気管や肺に到達します。
嘔吐による胃内容物の逆流や、胃管カテーテル留置により細菌がカテーテルを伝わり気管に流入することもあります。
その2 気管チューブから菌が吸入され発生
人工呼吸器回路から、挿管チューブに送られる空気はバクテリアフィルターを通しています。閉鎖回路である挿管チューブと呼吸器回路の途中解放による、大気の吸入が原因となります。
原因としては、吸引操作時の不潔操作、人工呼吸器回路の細菌汚染、加湿水の細菌汚染などによって起ります。不用意に回路の接続を解放することは厳禁です。
その3 免疫力低下などによる発生
患者さんの免疫力低下などによっても起こります。
看護師の吸引時手洗い、清潔操作の重要性
肺炎原因菌の多くは、菌緑膿菌・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌です。
多くは医療従事者の手指を介した接触感染が原因です。人工呼吸器関連肺炎の予防に最も大切なことは、言うまでもなく医療従事者の手洗いと手指消毒です。
マスク、ディスポーザブル手袋の使用を徹底しましょう。速乾性手指消毒剤を常に携帯しておくことも必要です。出来る限り閉鎖式吸引セットを使用して、気管内と大気の接触を防ぐことも必要です。
看護師の口腔ケアの重要性
挿管を予定している患者さんには、十分な口腔ケアを行ってから挿管を行いましょう。挿管後は1日2回以上の定期的な口腔ケアが推奨されています。
挿管チューブのカフ圧が不十分な場合、口腔・鼻腔内の分泌物が挿管チューブを伝って気管内に流れ込みます。カフ圧計を使って適切な圧調節に努めます。
また、挿管チューブの圧を急激に抜くと、上側に貯留していた痰や唾液が気管内に落ち込み肺炎を発症する危険があります。カフ上吸引を行ってから、カフ圧をゆっくり抜いていく必要があります。
胃管カテーテルの早期抜去、回路の清潔保持の重要性
胃管カテーテルを伝っての感染、肺炎の危険性があるため早期抜去が望ましいと言われています。ただし、嘔吐があり吐物の逆流が懸念される場合は注意が必要です。
PEG経管栄養実施されている場合は、なるべく座位に近い姿勢が望ましいです。
回路の汚染を予防するため、ネブライザー使用時以外の加湿は原則として行いません。
まとめ
いかがでしたか?
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は患者さんの抵抗力や病状の問題もありますが、看護師の手指衛生、看護手技の確実さが予防の決め手です。
院内感染防止マニュアルの再確認をして、人工呼吸器関連肺炎を予防しましょう!