シスター・カリスタ・ロイの看護理論を簡単に言うと

シスター・カリスタ・ロイの看護理論を簡単に言うと

シスター・カリスタ・ロイの看護理論は、実際に患者さんと向き合いながら患者さんの抱える問題を見極め分析するために役立つ、現代的で実践的な理論です。

どんな理論で、どのように活用していけばよいのか、まとめてみました。

シスター・カリスタ・ロイ

シスター・カリスタ・ロイ(1939~)はアメリカの看護師、大学教授です。NANDAの看護理論化グループ委員長として大きな役割を果たしたメンバーの一人で、現在も大学教授として活躍しています。

適応していく力

ロイは、看護の役割は患者の持つ「適応していく力」を促進させることだと考えました。

これは、小児科で看護師として働いていた時、子どもたちが変化に柔軟に対応しながら急速に回復していく「適応力」に気付いたことに端を発しています。

適応モデル

ロイは自らの理論を適応モデルと名付けました。これは、人間を情報処理や生理的反応を行う1つのシステムであるとみなす考え方です。

この理論では、患者の情報をインプットである「環境からの内的・外的刺激」と、アウトプットとしての「行動」の2段階に分けて考えます。

その結果浮かび上がってくる看護問題に対し、看護診断を行い計画を立てていきます。

それでは、インプットとアウトプットとはどのようなことなのか、それぞれ確認していきましょう。

4つの適応様式

アウトプットとは、患者さんの行動のことをさします。どのような行動や反応をしているかを観察します。大きく4つに分けられています。

1つ目は、生理的様式です。体液と電解質、運動と休息、排泄、栄養、循環と酸素、感覚・体温・内分泌などの調整に関する身体の基本的作用をさしています。

食事をどれくらい摂っているか、血圧や血糖値などのデータはどうか、運動はしているかなどといった生理的な反応をみます。

2つ目は、自己概念様式です。個人が自分自身をどのようにみるのかという信念や感情の表れに注目します。疾患に対する患者さん本人の考え方も、治療に関わってくるので大切です。

3つ目は、役割機能様式です。社会における各人の立場に基づく義務の遂行をさしています。

例えば、すでに退職している人と現在も仕事をしている人、主婦の人、子どもでは、生活のリズムが違ってきますね。

多忙なサラリーマンで仕事上の付き合いが多い患者さんの場合、どうしても食事の管理が難しいことが多いようです。このような患者さんに合わせた療育の方法を一緒に考えていく必要があります。

4つ目は、相互依存様式です。重要他者やサポート・システムに対する関係の持ち方がどうか、治療を行っていく中で変化が生じるかどうかを観察します。

家族との関係が良好で、協力が得られそうなら心強いですよね。特に食事や運動など生活に密着したことは、家族の方にもご理解いただけると治療の後押しになるので、家族など身近な人との関係に注目できるといいですね。

3つの刺激

これらのアウトプット(行動、反応)を引き起こすのが、様々な刺激(インプット)です。刺激の種類は3つに分類されます。

1つ目は、焦点刺激です。直接その人に影響する問題を引き起こしている因子です。糖尿病の人で考えると、血糖値のコントロール不良ということがこれにあたります。

2つ目は、関連刺激です。現在の状況に影響していると確認できる、他の全ての因子です。インスリン注射手技がまだ習得できていないこと、病気に対する理解が十分できていないことなどが当てはまります。

3つ目は、残存刺激です。背景にある過去の経験や信念で、影響を与えている可能性があるが、現時点では不明確で未確認の因子です。本人の性格や好み、仕事など、間接的な要素です。

看護の現場で活用する際には、患者さんについて得られた全ての情報を、4つの適応様式や3つの刺激に当てはめ、整理していきます。これらをアセスメントした結果から患者さんの問題を抽出し、看護診断を行います。

最後に

いかがでしたか?シスター・カリスタ・ロイの看護理論についてまとめてみました。

システムや適応モデルという言葉だけでは難しく感じるかもしれませんが、患者さんの情報をこれらの枠組みに当てはめてみると、現状や問題点がわかりやすくなります。

患者さんの状態をより的確に把握するために、活用できるといいですね。


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