怖い心房細動の合併症、抗血小板剤服用の重要性と看護師の役割とは

怖い心房細動の合併症、抗血小板剤服用の重要性と看護師の役割とは

加齢に伴って発症頻度が高くなる、心房細動。心房細動は心電図で診断されます、単に「胸がドキドキする」「脈が乱れる」という自覚症状では診断不可能です。

心臓を拍動させ、全身に血液を送り出す刺激電動系に異常が発生し、心房が細かく痙攣したような状態になっているのが心房細動です。

心房細動の最大の合併症は「脳梗塞」「血栓塞栓症」です。この合併症を予防するために抗血小板剤の服用が欠かせません。看護師の役割を考えてみましょう。

心房細動は発作性?慢性?症状も人それぞれ

心房細動は、自覚症状と重症度があまり一致しない不整脈です。慢性心房細動で何年も心房細動のまま経過しているものの全く症状が無い人、時々心房細動に移行し動機等の症状が激しい人、心房細動の脈拍が速い人、遅い人様々です。

症状が無い人の中には、内服継続の必要性を自覚し続けることが難しいと言えます。飲み忘れや、受診の中断による抗血小板剤、抗凝固剤、ワーファリン等の中断は血栓塞栓症、脳梗塞の危険度を一気に高めます。

看護師は、心房細動患者さんが、症状が無くても処方された薬を勝手に中断しないこと、中断することによる危険性を十分に理解されているかを把握する役割があります。

抗血小板剤、抗凝固剤、ワーファリン服用の注意点は

血液の凝固システムは複雑です。血を固まりにくくする、という作用発現の機序は薬剤の種類によって異なります。それぞれの注意点について解説していきましょう。

抗血小板剤の特徴とは

血液が固まる機序は、「血小板血栓ができる」と「フィブリン血栓ができる」の2種類に分けられます。血小板凝集を抑制し、血栓生成を予防する薬を抗血小板剤と呼びます。商品名としては、プラビックス、プレタール、バイアスピリン、等ですね。

抗血小板剤服用中は出血が止まりにくい状態となります。手術や内視鏡治療前はあらかじめ休薬しておく必要があります。休薬期間は、薬剤によって違いますが、後述する抗凝固剤やワーファリンに比べて長いです。これは、休薬期間は血小板の寿命と一致しているためです。

抜歯程度の処置であれば、あれば薬を服用したまま行うこともありますが、患者さんは「抗血小板剤を飲んでいる」と確実に申告することが必要です。

抗凝固剤の特徴とは

心房細動の血栓塞栓症、脳梗塞予防には効果的な薬剤で、比較的新しい薬です。

一般名、アピキサバンと、一般名、リバーロキサバンという飲み薬は、活性化血液凝固第Ⅹ因子を可逆的に阻害し、血栓の発生を抑制する飲み薬です。FXa・Xaを選択的に阻害、トロンビン産生を抑制します。商品名は、イグザレルト・プラザキサ・エリキュース・リクシアナ等です。

この薬の特徴は、「拮抗剤が無い」ということです。ワーファリンが効きすぎている時や、急な出血や手術時には、拮抗剤であるビタミンKを投与すれば、ワーファリンの効果を減弱させることができます。

一般名、アピキサバン、リバーロキサバン服用中に消化管出血や脳出血が起こった場合、効果が減弱する約24時間を待つということになります。抗血小板剤に比べて作用発現、減弱時間ともに早いことが特徴です。

ワーファリンの特徴とは

ワーファリンは抗凝固剤の中でもっとも長く使用されている薬です。服用上の注意点は、他の薬剤との併用に注意が必要なこと、食事・嗜好品の注意点を守ってもらう必要があること、薬の効果は採決で判定することです。

例えば一部の抗生物質、風邪薬、解熱鎮痛剤(アスピリン等)はワーファリンの作用を増強させます。逆にビタミンK含有薬剤は作用を減弱させます。

納豆、クロレラ、青汁等はビタミンKが、ワーファリンの作用と拮抗し、作用を減弱させるため、原則として食べることは出来ません。緑黄色野菜や海藻類を極端に大量に摂ることも、避けなければなりません。

食生活に制約があることが患者さんのストレスになることもあります。

消化管出血や脳出血が起こった場合、手術が必要になったときは、ビタミンKを投与することで、ワーファリンの効果を打ち消すことが出来ることが特徴です。

抗血小板剤、飲み過ぎは飲み忘れと同じくらい危険

薬を飲み忘れることで血栓塞栓症、脳梗塞のリスクは高まります。しかし、それと同じくらい危険なのが「飲みすぎ」です。どの薬も出血の危険が高いのです。飲み過ぎの原因は、大きく2つに分けられます。

1つ目は、認知症やうっかりで薬を飲んだにも関わらずそれを忘れて重複服用してしまうこと。2つ目は飲み忘れに気が付いたときに、2回分を一気に服用したり、服用間隔が短くなり過ぎること。この2つです。

重複服用を防ぐ工夫、飲み忘れに気が付いた時の対応について、患者さんによく説明しておく必要があります。

抗血小板剤、抗凝固剤、ワーファリン服用、看護師の役割は

外来患者、在宅療養患者、入院患者問わず薬剤師の服薬管理が盛んになっています。患者さんへの注意点の説明、用法用量変更の対応も充実してきています。

看護師は、患者さんが服用している薬の内容をしっかりと把握し、検査・治療スケジュールに合わせた休薬と、薬の再開が実施できているかを管理する必要があります。

また、服用の必要性についての患者さんの理解度を、日常のケアで把握し、医師や薬剤師と連携する役割があります。

まとめ

いかがでしょうか?

循環器病棟に勤務する看護師以外からは「大事な薬とわかっているけれど、詳しいことはよくわからない」という声を聞きます。

心房細動の重大な合併症を予防するため、看護師の役割は大きいと言えます。薬を飲み続ける患者さんをサポートしていきましょう。


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