胃カメラ検査における経口と経鼻の違いとは?
今や、胃カメラ検査はとても身近な検査です。
胃カメラ検査について患者さんから質問される機会があるのは、消化器内科、消化器外科病棟や外来、内視鏡室に勤務する看護師だけではありませんね。
20代、30代の看護師さんのうち、自分が胃カメラ検査を受けたという人多くはないでしょう。そのため、胃カメラ検査について質問されても、体験談を話すこともできず、検査についての知識もないため上手く答えられなかった、という看護師さんが少なくありません。
今回は、看護師が知っておきたい胃カメラの経口(口から入れる胃カメラ検査)と経鼻(鼻から入れる胃カメラ検査)の違いを解説していきます。
「鼻から入れる経鼻胃カメラ検査は楽」は本当か
胃カメラ検査には、経口、経鼻の2種類の方法があります。
一般的に「口より鼻から胃カメラを入れる方が楽」というイメージが定着しています。経鼻胃カメラ検査を楽に受けられることを売りにする、胃カメラ専門病院の宣伝やテレビ番組の影響がかなり浸透しているようです。
本当に、経鼻胃カメラ検査は楽なのでしょうか?私は、内視鏡室看護師として勤務したこともありますし、自分が胃カメラを受けたこともあります。その経験から言いたいことは「胃カメラは鼻からしたからと言ってしんどくない訳じゃない」という事です。
その理由を詳しく解説していきます。
経口胃カメラ、経鼻胃カメラの前処置の違いとは
前処置とは、検査のために欠かせない準備・処置の事です。胃カメラは、患者さんにベッドに臥床してもらうだけで出来るわけではありません。
最初に経口、経鼻に関わらず、胃内の観察をしやすくするため「胃内有泡性粘液を除去する」という目的で指示された薬を飲みます。
その後、経口胃カメラは咽頭部、経鼻胃カメラは鼻腔の局所麻酔を行います。経口胃カメラは、咽頭麻酔用の薬剤を口に含み、一定時間飲み込まないように保持し、その後吐き出します。
経鼻胃カメラは、鼻の孔、鼻腔、副鼻腔に内視鏡を通していかなければなりません。経鼻用のカメラが細いとはいえ、口に比べてかなり狭いスペースにある程度硬度のあるものを通していくわけですから準備なしでは無理です。鼻腔内は血管が豊富で、胃カメラで傷つけるとかなりの鼻出血を起こす危険があります。
鼻腔内に、局所麻酔剤を注入し、15㎝くらいの長さの太めのネラトンカテーテル、又は前処置専用のカテーテルを鼻腔に挿入して「入るかどうか」を確認していきます。この前処置は楽なものではありません。
患者さんに、鼻つまりが無いかを確認した上で、通りやすいと思われる方の鼻で準備します。この時点で、鼻中隔彎曲や鼻腔狭小でカテーテルが通過しない人は、経鼻胃カメラが出来ません。人によって違いますが、所要時間は約15~20分ほどかかります。
この前処置は、鎮静下(鎮静剤を点滴し、ウトウトした状態)で行う事はできません。この前処置の違いが、経口胃カメラ、経鼻胃カメラの大きな違いと言えます。
「経口胃カメラの方が詳しく検査できる」は本当か
経口、経鼻用の胃カメラは当然、経鼻胃カメラの方が細いです。内視鏡は日々進歩し、細い物でも操作性、画像精度は良くなっています。
しかし、径が太い経口胃カメラの方が画像精度が高く、組織の一部を取って生検に出したりする操作はしやすいのです。
また、胃・十二指腸・食道で出血が起った際は、焼却止血、クリッピングなどの止血操作ができるのは経口胃カメラです。このことから、貧血が進行しておりすでに上部消化管の出血が疑われる患者さんには、経鼻胃カメラより経口胃カメラが選択されることが多いのです。
経口胃カメラの方が詳しく検査できる、とは言い切れませんが、より多くの機能があると言えます。
経口胃カメラ、経鼻胃カメラに適した患者さんとは
それぞれに患者さんの希望、病院が保有する機種によって選択されます。経鼻胃カメラを受けたいと思っていても、通っている病院に経口胃カメラしかなければ無理ですね。
経口胃カメラは、経鼻に比べて嘔吐反射が起こりやすいため、鎮静下で行うことが多くなっています。胃カメラ中の所要時間は同じでも、鎮静が覚めるまでの観察に時間がかかるため必然的に検査時間が長くなります。
胃カメラを受けてから、そのまま仕事に行きたい、なるべく短時間で済ませたいという患者さんは鎮静下での検査は適していません。
経口胃カメラに適した患者さんは、
□鼻中隔湾曲、鼻腔狭小で経鼻内視鏡が通過しない患者さん
□経鼻胃カメラで鼻血が出たことがある患者さん
□上部消化管出血が疑われる患者さん
経鼻胃カメラに適した患者さんは、
□検査中に会話したい患者さん
□経口胃カメラで嘔吐反射が強かった患者さん
□胃カメラ中に鎮静をしたくない患者さん
経口、経鼻胃カメラ双方にメリットはあることを知って
経鼻胃カメラの方が楽、という意味は「嘔吐反射が経口胃カメラに比べて少ない」ことを表していると思われます。鎮静下で行わずに済むことが「検査時間が短くて楽」ということになるようです。
しかし、内視鏡室で勤務していると、経鼻胃カメラの前処置を受けた患者さんから「鼻にチューブを入れられるのが辛い」「口からやった方がマシだった」など言われることは少なくありません。
経口、経鼻胃カメラそれぞれの違いを患者さんに良く説明しておく必要がありそうです。看護師が違いをしっかり理解しておくことももちろん必要です。
出血に対する止血処置、粘膜切除などの治療は経口内視鏡でしかできません。
まとめ
いかがでしたか。
経口、経鼻胃カメラの違いについて、もっと深く知りたい方は日本消化器内視鏡学会のホームページや、胃カメラ件数が多い専門病院のホームページを参考にしてみて下さい。
分かりやすく解説されていますから参考にして頂き、患者さんへの説明が上手くできるようになりましょう。