医療用麻薬、経口投与、貼付薬の違いとは?看護師の基礎知識
看護師が医療用麻薬を取り扱う場面は、多くあります。病院だけではなく、在宅患者さんの疼痛管理にも麻薬は使用されています。
医療用麻薬が使われる症例は以下の通りです。
- 手術中、術後の疼痛コントロール
- 癌の疼痛コントロール
- 麻薬以外の痛み止めに効果がない、慢性疼痛の緩和
- 急性心筋梗塞発症時、大動脈解離などの激痛緩和
診療科の違い、急性期か慢性期、病院か在宅か、問わず使用される医療用麻薬。これらの麻薬製剤は、「麻薬及び向精神薬取締法」という法律で管理されています。看護師も慎重な取り扱いが求められます。
今回は、医療用麻薬の経口投与(飲み薬)、貼付剤(貼り薬)の違いについて解説してみましょう。
医療用麻薬、経口投与から貼付薬に変更するときはどんな時
医療用麻薬は「モルヒネ」「オキシコドン」「コデイン」「フェンタニル」などです。
一昔前までは、これらの製剤の投与経路は、経口(飲み薬)、注射、座薬の3種類が中心でした。最近では、経口摂取が不可能な患者さん、吐き気がなどの消化器症状が強い患者さんにも使用しやすい貼付薬(貼り薬)の商品のバリエーションが増えています。
例えば、癌の終末期で自宅療養中の患者さん、食事を摂れていた時は医療用麻薬を経口摂取していました。しかし、徐々に食欲がなくなり、胃の詰まる感じや飲み込みにくさが出現してきました。
痛みはしっかり押さえたい、飲み薬は飲めない。麻薬の使用は止められない。こんな時、医療用麻薬の貼付薬に変更し、疼痛管理を行うことになります。
貼付薬で経口投与と同等の鎮痛効果を得られるという訳です。
誤解されやすい、医療用麻薬の貼付薬は効果が弱い、は間違い!
患者さん、ご家族、そして医療従事者も「医療用麻薬、貼付薬は飲み薬より効果が弱い」と誤解していることが多いのです。医療用麻薬の経口投与と貼付薬は、ほぼ同等の効果を発揮します。
確かに、貼るだけで麻薬が効いていますよ、といっても実感がないのかもしれません。貼付薬は指示された量を毎日決められた時間に貼りかえることによって、麻薬の血中濃度を一定に保ち、効果を表します。
経口投与では「飲む」という行為で麻薬を体内に取り入れます、貼付薬は不注意によって剥がれてしまうとその時点で効果が無くなってしまいます。これは大きな違いです。
麻薬成分が残った状態で貼付薬が剥がれて、紛失することは「麻薬の紛失」という事故と認識してください。
医療用麻薬、経口投与と貼付薬の特徴の違いとは
経口投与、貼付薬に共通していることは「決められた時間を守る」「容量を間違えない」ことです。薬を飲む時間、貼り薬を貼りかえる時間を守ることで、麻薬の血中濃度を一定に保つのです。
ここからはそれぞれの特徴を見ていきましょう。
医療用麻薬、経口投与
・最も管理しやすく、患者さんが自己管理しやすい方法である。
・吐き気などの症状が強い、消化吸収に問題があると効果にムラが出る。
・薬を飲むときに取りこぼし、紛失しやすい。
医療用麻薬、貼付薬
・剥がれてしまう可能性がある。不穏や認知症がある患者さんが自分ではがしてしまうことがある。
・速効性が期待できない。
・はがした後も薬効がしばらく持続する。
・皮膚温が高いと吸収が早まる特徴がある。
医療用麻薬、貼付薬が剥がれてしまわない工夫とは
看護師は、貼付薬が次の貼り換え時間まで剥がれないように、工夫する必要があります。具体的な工夫を挙げてみます。
不穏や認知症で貼付薬をはがしてしまう場合
患者さんの手の届かない背部、腰部に貼付しるのが良いでしょう。体の背面は体動で剥がれてしまいやすいため、フィルムドレッシングで覆うとなお良いでしょう。
在宅介護の場合
訪問入浴スタッフ・介護ヘルパー・家族に剝がさないよう注意喚起しておく必要があります。医療用麻薬の貼り薬は「麻薬」と記載されているわけではありません。
訪問入浴や介護ヘルパーの身体介護時に剥がされてしまったり、剥がれかけの貼付薬を廃棄される危険性があります。もし剥がれてしまった時の対策も伝えておきましょう。
まとめ
製剤の進歩、在宅医療の推進、適応の拡大によって、看護師が医療用麻薬を取り扱う場面は増えています。経口投与、貼付薬それぞれの違いを知って、正しく取り扱えるようにしましょう。