NPPVの適用基準のガイドラインとは
NPPVとはNon invasive Positive Pressure Ventilationの略で非侵襲的陽圧換気療法と言います。
今までは長期間の人工呼吸器の利用では気管切開をする必要がありましたが、NPPVの登場により非侵襲的に呼吸状態を管理することができる症例が増えてきました。
今回は、NPPVの適用基準のガイドラインについてご紹介します。
1.NPPVのガイドラインとは
日本呼吸器学会では2015年2月に「NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン(改訂第2版)」を発表しています。
ガイドラインには適応とそのエビデンス、適応となる疾患・病態について記されています。
2.急性呼吸不全
急性呼吸不全では、心肺停止、高度意識障害、上部消化管出血・腸管の閉塞、不安定な循環動態、顔面の外傷、気道確保困難などの場合相対的禁忌となります。
ガイドラインでは、急性呼吸不全の場合COPDの急性憎悪、心原性肺水腫、免疫抑制低下、COPDのウィーニングでエビデンスレベル・推奨度が高くなっています。
条件によっては気管支喘息にも有効とされています。
上気道閉塞、ARDS、外傷、閉塞性無呼吸症候群、肥満による低喚起ではエビデンスが低く、まだ十分なコンセンサスが得られていません。
3.慢性呼吸不全
慢性呼吸不全では、気道確保が困難な例、マスクフィットが困難な例、患者さんや家族の協力や理解が薄い例などで相対的禁忌となっており、日中や睡眠時のSpO2の低下や二酸化炭素上昇、呼吸運動能低下、呼吸不全急性憎悪のエピソードがある場合適応となります。
高二酸化炭素血症を伴わない慢性Ⅰ型呼吸不全に対してNPPVが適応されることはほとんどありません。
慢性期の場合、肥満低喚起症候群でエビデンス・推奨度が高く、神経筋疾患、慢性心不全におけるチェーンストークス呼吸で中程度となっており、COPDや拘束性喚起障害ではそのエビデンスは低くなっています。
4.NPPVのメリット・デメリット
今までは呼吸不全の場合ほとんどが気管内挿管や気管切開による人工呼吸管理が行われてきましたが、NPPVの最大のメリットはそれらの侵襲的な行為を行わなくてよい点にあります。
挿管や気管切開では人工呼吸関連肺炎(VAP)などの合併症の危険が伴います。
また、確実に挿管を留置するためには鎮静・鎮痛が必要となり、挿管・気管切開すると発声を妨げられ十分にコミュニケーションを取ることもできなくなります。
それは、患者さんおよび家族の大きな負担となってきました。NPPVはマスクのつけはずしで再開が容易にできるため、人工呼吸器の離脱(ウィーニング)もより積極的にトライすることができるようになりました。
前述したように高度な呼吸不全には用いることはできませんが、自発呼吸のある患者さんにとっては負担が少ない呼吸療法の幅が広がったと言えるでしょう。
デメリットとしては、NPPVは鎮静・鎮痛を行わず使用することが多く、患者さんの自発呼吸が不可欠なため、患者さんの協力が不可欠になります。
NPPVと呼吸が同調できずパニックになってしまう患者さんもいるため事前の説明と同意、適応の可否の見極めが重要となります。
最後に
いかがでしたか?在宅療養でもNPPVを使用する患者さんが増えてきました。病棟・施設でもより利用例が増えていくことが考えられます。
NPPVの構造、観察点、看護のポイントなどを理解し、効果的に治療ができるようサポートしていきたいですね。