PEEPってなに?看護師を悩ます人工呼吸器用語解説します
人工呼吸器管理の患者さん、呼吸器の設定、一回換気量、酸素濃度、呼気終末陽圧・・・本当にたくさん勉強しなければならないことがあって、しかも日本語とヨコモジが混在し混乱しますね。
今回は、そんな人工呼吸器関連用語の中で、もっとも質問が多いPEEP(ピープ)について解説していきましょう。難しい参考書を読んでわかり辛いと感じている方、ぜひ参考にしてください。
まずは自然の呼吸と、人工呼吸の違いから
人の胸腔内、肺の中は陰圧です。そこで、空気を吸うときは呼吸筋、骨格筋が働き肺を広げ空気を吸い込みます。
しかし、人工呼吸器管理の場合、空気は吸いこむのではなく「送り込む」陽圧換気方法になります。この陰圧・陽圧の考え方をしっかり理解していないと、人工呼吸器関連は理解できません。
PEEP(ピープ)=呼気終末陽圧、え?それってどういう意味?
PEEPとはpositive end-expiratory pressureの略語です。一言でいえばPEEPの目的は、「肺(肺胞)虚脱の予防」です。
人工呼吸器は外から空気を送り込んで換気する陽圧換気ですから、肺胞がぺったんこにしぼんでしまうと、とても強い圧力で空気を送り込まなければ換気できなくなってしまいます。
たとえれば、硬いぺったんこの風船に空気を入れるのはとても強い力が要りますよね。しかし、ちょっとだけ膨らんだ風船に空気を入れるときはどうでしょか?少しの労力で空気が入りますね。
PEEPはこんな風に、肺(肺胞)にちょっとだけ圧を書かけたままにして、換気をスムーズにし呼吸器関連合併症を予防するための機能です。
PEEPを設定する目的は?酸素化の改善と肺損傷の予防
肺胞を少し大気圧より高い圧にしておくことで、より酸素化を改善しようという目的です。
また、VILI(ventilator-induced lung injury)=人工呼吸惹起性肺損傷を予防する目的があります。これは、「人工呼吸器の設定が原因と想定される肺損傷」という意味です。
同じ内の中でも、ぺったんこ具合にムラが発生すると、より硬い部分を膨らまそうとする強い力をかけると、柔らかい部分は破裂してしまいます。このような原理で、肺損傷や気胸の原因となってしまいます。
肺(肺胞)に一定の圧をかけておくことによって、このようなムラをなくし肺損傷を予防する目的でPEEPをかけます。
PEEPをかけておくことで害はあるの?肺が陽圧になる弊害とは
人の胸腔内、肺の中は陰圧です。それは、呼吸のためだけではなく、全身の血液を心臓に返すことを補助しています。
全身に送り出された血液は、酸素と二酸化酸素を交換し、また心臓に戻ってきます。通常、胸腔内にある心臓は陰圧が作用し「血液が帰ってきやすい」状態となっています。
しかし、PEEPをかけ胸腔内が陽圧になることで、心臓に帰る血液をサポートする力が弱まり、その結果心拍出量(心臓が一回に送り出す血液の量)が減少します。
人工呼吸器管理中は、体液出納バランスや心負荷の状態などを良く観察し、厳密な輸液管理が必要となります。特に、人工呼吸器設定の変更後は状態観察を密に行いましょう。
まとめ
いかがでしたか?人工呼吸器関連用語アレルギーの方も、ちょっとイメージしていただけましたか?PEEPの意味を知って、より安全なケアと確実な観察に繋げてください。