常在菌と感染症の関係をまとめました

今日は常在菌について説明したいと思います。じょうざいきんと読みます。それではさっそく行きましょう。

常在菌とは?

常在菌とは、人の体内に存在する微生物のうち、多くの人に共通してみられて、普段は病原性を示さないもののことを指します。

人は、胎児の間は無菌状態ですが、生まれた瞬間から皮膚、気道、消化管などをはじめ、全身で多くの菌が増え始めます。

普段は体の決まった場所に集団で存在していて、侵入した病原微生物の繁殖を抑制してくれるという効果もあります。

人と常在菌は「共生関係」にあるといえます。菌というと悪いものというイメージがありますが、人が健康でいるためになくてはならないものなんですね。

代表的な常在菌

常在菌には、どのようなものがあるのでしょうか。主な生息場所ごとに見てみましょう。

  • 鼻腔…黄色ブドウ球菌
  • 皮膚…表皮ブドウ球菌
  • 口腔、咽頭、喉頭…肺炎球菌、レンサ球菌
  • 大腸…バクテロイデス、ビフィズス菌
  • 膣…デーデルライン桿菌

ビフィズス菌などは、善玉菌として有名ですね。菌の名前に含まれる「球菌」や「桿菌」というのは、菌の形を表しています。

球菌は球状やソラマメ型をしています。桿菌は円筒状で、らせん菌はらせん状や波状の形です。

体中のあちこちに菌が住んでいて、私たちの体を守ってくれています。

例えば、皮膚の表面は、毛嚢や汗に含まれる物質に加えて、表皮ブドウ球菌などから分泌される遊離脂肪酸が弱酸性を保っています。このため常在菌以外の病原菌が繁殖しにくく、細菌感染が防御されているのです。

常在菌の感染症

このように普段は私たちの健康を守ってくれている常在菌ですが、免疫が低下すると、一気に増えてしまうことがあります。

治療で薬を服用した結果菌のバランスが崩れ、常在菌が異常に増えて感染症を引き起こすこともあります。

普段害を及ぼさない菌でも、体が弱っている患者さんにとっては感染症の原因となることがあるので、注意したいですね。

例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)という菌があります。普段は鼻や口の中に生息している弱い常在菌ですが、院内感染の起因になることも多い菌です。

抗菌薬に対して耐性を持っており、抗菌薬を使用している(=菌のバランスが崩れやすい)人や抵抗力が弱っている人がかかりやすいです。

抗菌薬が効きにくく、治りにくいのでやっかいな感染症です。発症した患者さんがいたら、速やかに個室に移動して隔離することが大切です。使っていたものをウエットクロスで清拭することも忘れないようにしましょう。

菌交代現象とは?

抗菌薬の常用で目的とする病原菌は減少・消失するものの、代わりに異常に増殖した微生物が新たな問題を引き起こすことを菌交代現象といいます。

たとえば、女性の患者さんが膀胱炎のために抗菌薬を内服中、炎症の原因菌だけでなく膣のデーデルライン桿菌が少なくなって、常在菌であるカンジダが一気に増えてカンジダ膣炎を発症する、というのは菌交代現象によるものです。

デーデルライン桿菌は膣内でグリコーゲンの分解により酸を生み出すので膣内を酸性に保ち、病原菌から守ってくれています。

最後に

いかがでしたか?いつも共生しているのに、意外と知らない常在菌についてまとめてみました。

普段は頼もしい存在ですが、抵抗力の落ちた患者さんや、抗菌薬などを服用している患者さんにとっては、思いがけないトラブルの原因にもなります。

抗菌薬を適正に利用することや、院内感染の防止を徹底することが大切ですね。


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