看護の現場で使える院内感染を防止・予防するゾーニングを理解しましょう
病院など医療現場では、清潔を保つため、様々な工夫がされています。
日常生活では「清潔」というと個人差がありますが、医療現場では感染症の拡大を防ぐため場所や場面ごとの衛生管理の方法が細かく定められています。
医療現場における「清潔」「不潔」の考え方と、場所や場面の分け方(ゾーニング)についてまとめてみました。
医療現場での「清潔」
医療現場では、場所や場面ごとに、いくつかのレベルでの「清潔」を使い分けています。そしてそのレベルごとに衛生管理の方法が決まっています。
また、同じ部分が場面によって清潔とされたり不潔とされたりすることもあります。
例えば、看護師が滅菌ガウンを着ている内側は清潔でしょうか、それとも不潔でしょうか?答えは、場面によって違うのです。
手術時に着ている場合は不潔、感染症で隔離されている患者さんのケアを行う時に着ている場合は清潔とみなされます。感染から何を守るために着るのか、ということが判断する基準になります。
手術時は、手術を受ける患者さんに感染症がうつらないようにするためですし、感染症の患者さんのケア時には医療者が感染しないために着ています。
滅菌ガウンや手袋を使う時は、その目的も併せて考えるようにしたいですね。
手術時の清潔
手術室のように特に清潔が要求されるところには、清潔について厳しい基準があります。
私たちは普段、細菌やウイルスなどの病原体と常に隣り合わせの状態にあります。
通常の状態なら、皮膚や粘膜でからだの内部はしっかり守られていますが、手術中の人はその皮膚や粘膜が切り開かれており、感染の危険に直接さらされています。
そのため、手術時手洗いを行い、滅菌ガウンを着て、滅菌手袋を着けるという、徹底した衛生管理が求められます。
手術時手洗いとは、「流水・洗浄剤含有の消毒薬による120秒以上のもみ洗いに加え、擦式手指消毒薬による手指から肘までの消毒」という徹底した方法で、常在菌を著しく減少させる手洗いです。
いかに手術中の人が無防備な状態であるか、そのための感染対策が重要であるかがわかりますね。
ゾーニングとは
環境(ゾーン)を区域分けすることを「ゾーニング」といいます。病院では、院内感染防止のために用いられている概念です。
病院内では、衛生に細心の注意を払う必要がある場所と、汚物を処理するような場所、患者さんや医療従事者が普段いる場所、というふうに清浄度の違う場所が同じフロアにあります。
これらの場所を区分けして、交わらないようにすることで、清潔区域を維持し、感染源の拡散を防ぎます。
- 高度清潔区域…衛生に細心の注意を払う場所です。手術室などが該当します。
- 一般清潔区域…普段いる場所です。ナースステーションや病室、給湯室といった場所がこれにあたります。
- 汚染管理区域…汚物室やトイレなど、感染源になる物を管理する区域です。
病院では、これらの区域を色分けしたり、マーク表示したりといろいろな工夫で区別するようにしています。
清潔な場所と不潔な場所は、動線が交わらないように配置されています。トイレの前を通って手術室に行く、というようなことがあっては困りますね。
病院に行ったときに、トイレや手術室がどこにあるのか、観察してみると面白いかもしれません。
最後に
いかがでしたか?病院における清潔・不潔の考え方やゾーニングについてまとめてみました。
「同じ部分でも場面によって清潔かどうか違う」など複雑そうなことでも、その意味合いを考えれば納得がいきますね。
患者さんだけでなく、医療従事者自身も守るために、しっかり覚えておきましょう。