QTc時間(補正QT時間)の計算方法と正常値と疑うべき病気
心電図からは様々な疾患が読み取れますが、そのひとつに補正QTc時間(QTc時間)による異常があります。QTc時間の異常を放置しておくと生命に関わる場合もあります。
今回はQTc時間の計算方法と正常値、また異常値で疑うべき疾患を紹介します。
1.QcT時間とは
QT時間とは心電図のQ波からT波までの時間のことで心臓の電気的興奮時間を表しています。ただしQT時間は心拍数の変化により変動を受けるため、心拍数の影響をなくすために補正する必要があります。これが補正QT時間(QTc時間 corrected QT time)です。
2.補正QT時間の計算方法と正常値
一般的な計算方法はBazettによる計算式で、QT時間を心拍数のルートで割った時間になります。
QTc=QT/√R-R
ルートの計算が複雑という場合には、R-R間隔を入力すると自動で計算してくれるサイトもあります。
http://www.cpc-global.jp/web-calculator/
QT時間の正常値は0.30~0.45secですが、QTc時間の正常値は0.340~0.425secになります。
Bazettによる補正が一般的ですが、この式では心拍数が増加している場合には過大な補正となり、心拍数が60回/sec以下となる場合には過小な補正となることがあります。
心拍数が変化するケースではFriderciaによる計算式を用いたほうが正確に補正ができます。
Fridericiaによる補正 QTcF=QT/R-R1/3
3.QTc時間の延長
QTc時間の延長で疑われる疾患は、低カリウム血症、低カルシウム血症、QT延長症候群などです。
①低カリウム血症
下痢や嘔吐による消化管の大量喪失や長期間による偏った食生活によるカリウム摂取の欠乏、アルドステロン症やクッシング症候群による多尿によるカリウムの喪失により生じます。
症状としては脱力感や筋力低下、嘔吐、便秘など、重症の場合は四肢麻痺、呼吸金麻痺、腸閉塞などがあげられます。
②低カルシウム血症
腸管でのカルシウム吸収の低下、骨減少によるカルシウム吸収の低下などが原因で起こります。低マグネシウム血症や慢性腎不全、ビタミンD欠乏、副甲状腺機能低下症などがその要因となります。
症状としては、テタニーや痙攣などの神経症状、徐脈や心収縮低下、精神状態の変化などがあげられます。
③QT延長症候群
QT延長症候群とは心臓の興奮からの回復が遅れることにより起きる心臓疾患でトルサデポアン(Torsades de pointes(TdP)という特徴的な多型性心室頻拍が出現します。
症状としては動悸や失神、重症なときは心停止、突然死にも起こりうる注意すべき疾患です。
4.QTc時間の短縮
QTc時間の短縮で疑われる疾患は、高カルシウム血症、ジギタリス効果、QT短縮症候群などです。
①高カルシウム血症
高カルシウム血症はカルシウムの多量摂取、副甲状腺機能亢進症、癌による骨破壊などが原因で起こります。症状としては、便秘、嘔吐、腹痛、食欲不振、重症の場合には錯乱、情動障害、昏睡、筋力低下、不整脈などあげられます。
②ジギタリス効果
抗心不全薬であるジギタリスを使用している場合、特徴的な心電図を示します。その特徴として、ST波の盆状降下、PQ時間の延長、QT時間の短縮があります。
引用:http://www.eonet.ne.jp/~hidarite/pm/drug02.html
③QTc短縮症候群
まれな疾患ですが、QT時間の短縮にVF(心室細動)やAF(心房細動)などの頻脈性不整脈を合併する疾患群です。遺伝子変異が原因で、現在では5つの遺伝子型が報告されています。
最後に
いかがでしたか?電解質の異常は病棟でもよく遭遇します。患者さんの様子がなんとなくおかしいとなったときに、症状や心電図から早期に異常が発見できるようになるといいですね!