予防接種など筋肉注射をするときの正しい方法と注射薬
注射をする時には、薬剤の種類や持続時間によって、刺し方や部位を使い分けています。ここでは、筋肉内注射について見ていくことにします。
インフルエンザの予防接種の時など、普段注射や採血をする肘の内側ではなく、肩に深く刺されたことはありませんか?
この注射方法が筋肉内注射です。筋肉内注射について部位の選び方や手順などをまとめてみました。
筋肉内注射をする場合
筋肉内注射は、静脈内注射と比べて吸収されるのに時間がかかり、その分効果が持続します。
静脈内注射だと血管に直接薬を入れることになりますが、筋肉内注射の場合筋肉内に薬が拡散して、毛細血管から吸収されてから血管に到達するので、時間がかかるのです。
持続時間と効くまでの時間で筋肉内注射が適している薬剤や、懸濁性(デポ製剤等)や油性の注射液など、静脈に注射をすると塞栓ができるおそれのある薬剤には、筋肉内注射を用います。
筋肉は皮膚よりも知覚が鈍いので、筋肉内注射なら刺激のある注射液でも痛みが少なくてすむというのも特徴です。
筋肉内注射を行う部位
主に、上腕部か殿部のいずれかを用います。大きな血管や、大切な神経を避けた部位を選びます。上腕の場合は、肩峰から3横指分下に刺します。
上腕には橈骨神経や正中神経、尺骨神経が通っているのでこれらに注意します。殿部の場合、片側の殿部を4等分し、その中心から外側方向へ45度に伸ばした線と、腸骨稜の交点を結んだ三分の一を穿刺します。
殿部にも上殿神経、下殿神経、坐骨神経、大腿神経が通っているので、これらに刺さないようにします。神経に影響が及ぶと、麻痺などの重大な後遺症を起こすことがあります。
なので、経口投与や静脈内注射などで済むものは、極力筋肉内注射の使用を避けるようにします。
注射薬の準備と筋肉内注射の手順
まず、注射薬の準備について確認します。
注射針は、注射器のメモリと刃面とが一直線になるようにしっかりと接続します。キャップはつけたままにし、注射針には絶対触れないように注意しましょう。
次に、薬液を吸い上げます。薬剤の入れ物がアンプルの場合は吸い上げ、バイアルの場合は注射針をゴム栓に刺した後バイアルを逆さにします。
薬液を吸い上げられたら、注射時に空気が体内に混入しないよう、指で注射器をはじいて注射器内の空気を抜きます。
次に、筋肉内注射の手順について説明します。深い所に刺す筋肉内注射は、しびれや出血に細心の注意を払い、都度確認します。
まず、薬剤を確実に皮膚表面より深い筋層に到達させるために、穿刺部の筋肉を大きくつかみ(殿部の場合は伸展させ)、角度は45~直角に刺入します。針は2/3程度刺します。
薬剤を注入する前に、注射器を1回少し吸引して、血液の逆流がないか、また神経への穿刺の有無を確認するために、声をかけて手先のしびれなどの症状がないか必ず確認しましょう。
血液の逆流がある場合は注射針を少し引いて再度逆流がないか確認するか、抜針し、注射部位を変えて再度刺します。
また、しびれがある場合は、神経への穿刺の可能性があるため、すぐに針を抜き様子を見て、やり直す際は別の部位で行いましょう。問題なければ、ゆっくり薬剤を注入します。
注射後は、刺入部周辺をもみます。これは薬剤が停滞して硬結ができるのを防ぐためです。後から薬剤によるショックや副作用などが発現する場合があるので、注射後も患者さんの様子をよく観察することが大切です。
最後に
いかがでしたか?筋肉内注射についてまとめてみました。持続時間が長くなる一方、深い場所に刺すためリスクもある方法です。
場所を確実に選ぶことが事故を防ぐので、穿刺部位の選び方はよく確認しておいてください。刺入時、刺入後の患者さんの様子をよく見ておくことも忘れないようにしたいですね。