首の静脈から点滴する中心静脈栄養法の注意点とは
多くの場合、点滴は前腕に刺入して行います。しかし、時々首の静脈から点滴を受けている人がいます。
これは中心静脈栄養法と呼ばれるものです。どのような場合に用いるのか、どのような点に注意するのかなど、中心静脈栄養法についてまとめました。
中心静脈栄養法とは
経口摂取ができず、消化管も使用できない時に静脈(上大静脈または下大静脈)内にカテーテルを留置し、高エネルギーの輸液を持続的に投与する方法を経静脈的高エネルギー栄養法と呼びます。
中心静脈を使って行うことが多く、この場合を中心静脈栄養法といいます。カテーテルの挿入は無菌操作で行います。
中心静脈栄養法を用いる場合
腕の方が簡単に針を刺せそうなのに、なぜわざわざ中心静脈から輸液を入れるのでしょうか?
高エネルギー輸液は高浸透圧液、つまりとても濃いため、細く血管壁も薄い末梢神経に入れてしまうと、血管痛を生じたり、血栓性静脈炎を起こしてしまったりする危険が高くなります。
上大静脈の方が太く、血流量も多いので、早く希釈されます。そのため高エネルギーの輸液の投与ができるのです。
嚥下がうまくできなくなっている患者さんや、消化器系の病気で食事を十分摂れない患者さんが栄養を補うために行います。
また術前の低栄養予防や、重症の外傷や熱傷で急速に大量の輸液が必要な場合にも用いられます。
注意すべき合併症
体の中心に針を入れる中心静脈栄養法には、通常の点滴以上に、注意すべきことが多くあります。
まず、中心静脈ラインは末梢ラインに比べて容易に入れ替えることができないので、細菌の培地になりやすく、感染のリスクが高くなります。
また、穿刺時に神経や肺を傷つけてしまう恐れもあります。誤ってカテーテルの先が血管を突き破ってしまった場合、気胸や血胸の危険もあります。
そのため、カテーテルを挿入した後すぐに胸部エックス線写真でカテーテルの先が正しい位置に入っているか確認する必要があります。
長期に及ぶと、血栓が形成されることがあります。そうすると点滴の速度が遅くなるので、速度の変化にも注意するようにします。
長期にわたった場合
長期間輸液だけで栄養補給をしていると、どうしても栄養素が不足しがちになります。栄養状態には常に気を配りましょう。
必須脂肪酸が不足すると、皮膚の乾燥や湿疹、脱毛が見られるようになります。また、タンパク質が消耗すると、上腕が細くなるので、上腕筋囲を測定することで確認できます。
加えて、高濃度の糖分が入ってくることにより、糖代謝異常が起こることもあります。血糖値の測定は定期的に行いましょう。
在宅で行う場合
中心静脈栄養法は、患者さんの状態によっては在宅で行うこともできます。ただし、病院で行う以上に患者さんの自己管理が大切になります。
週二回以上はライン交換や刺入部の消毒が必要になりますし、ラインが抜けないように工夫してもらうことも重要です。使用済みの刺入針の処理にも決まりがあります。
医療廃棄物として、医療機関や薬局などで廃棄してもらうようにします。これらのことを守れば、家での生活に合わせて行えるので、患者さんの生活の質の向上にも繋がります。
注意点を患者さんに十分理解してもらうことが大切です。
最後に
いかがでしたか?中心静脈栄養法についてまとめてみました。高濃度の輸液を体の中心に近い部分に送り込むので、素早く栄養を得られる一方、リスクも高い方法です。
感染や事故の予防に努め、患者さんの体調の変化を見逃さないようにしましょう。