ペースメーカー適応となる3つの疾患とは
人工ペースメーカーは電気刺激発生装置(ペースメーカー)と電気刺激を伝える導線(リード)からなり、心拍が一定以上の間隔を空いたときにそれを感知して電気刺激を人工的に送る治療です。
今回はペースメーカーの適応となる疾患を紹介します。
1.心臓の働き
心臓は洞結節から始まり、房室結節、ヒス束、プルキンエ線維と電気信号が流れる刺激伝導系によって規則的に動かされています。
心臓の拍動は成人で1分間に60~90回、1日の心拍数は約10万回にもなります。
正常な心臓では洞結節がペースメーカーの役割を果たしていますが、何らかの原因で心臓が正しく刻めない場合に行われるのが人工ペースメーカー治療です。
2.ペースメーカーの種類
ペースメーカーには体外式ペーシングと植え込み型ペーシングがあります。体外式は一時的なもので、ペースメーカー本体を体外に置くものです。
急性心筋梗塞などで生じる房室ブロックは一時的なものですので、体外式ペースメーカーの適応となります。植え込み型ペースメーカーは恒久的にペースメーカーが必要な場合に適応となり、体内にペースメーカーを植え込みます。
鎖骨下部位の静脈からリードを挿入し心房、心室もしくは両方にリードを留置します。ペースメーカー本体は前胸部鎖骨下に作成した皮下ポケットに留置します。
表面からは皮膚の下にペースメーカー本体の形が盛り上がってわかるように見えます。
3.ペースメーカーの適応
①洞機能不全症候群(sick sinus syndorome SSS)
洞機能不全症候群は電気信号を作りだす洞結節の機能障害により、心臓の興奮を発する信号の不具合が起こり徐脈を起こす状態のことを言います。
洞結節あるいは周辺の異常により洞徐脈や洞房ブロック・洞停止をきたした状態です。洞機能不全症候群には、
A)原因不明の著しい持続性洞徐脈(50回/分以下)
B)一過性あるいは持続性の洞停止または洞房ブロック
C)頻脈性不整脈を伴う洞徐脈(徐脈頻脈症候群)
の3つに分類されています。頻脈は心房細動であることが多いですが、心房性頻拍や心房粗動であることもあり、失神発作をひきおこすこともあるため、ペースメーカーが適応となるケースが多いです。
②房室ブロック
房室ブロックは、洞結節から房室結節への伝導刺激の興奮の伝わりに異常がある状態です。Ⅰ度・Ⅱ度(モビッツⅠ型・モビッツⅡ型)、Ⅲ度に区別されます。
モビッツⅡ型はQRS波の欠落が数拍に1拍不規則に起こり、アダムス-ストークス発作を起こすことがしばしばあります。モビッツⅡ型は高度房室ブロックに進む危険な前触れでもあります。
Ⅲ度房室ブロックは完全房室ブロックとも言われ、房室接合部で電気刺激が完全に遮断され、電気刺激が心室に伝わらない状態です。
モビッツⅡ型やⅢ度房室ブロックで失神発作などの症状を繰り返す場合にはペースメーカーの適応となります。
③頻拍性不整脈
頻拍性の不整脈では十分な心拍出量が得られず失神を引き起こすものがあります。それには突然死につながる心房細動や心室頻拍、突発性心房粗動や、上室性頻拍、WPW症候群の心房細動による偽心室頻拍などがあります。
薬物療法やカテーテルアブレーションでの治療が有効でない場合は、ペースメーカーの適応となります。
最後に
いかがでしたか?ペースメーカーを装着した患者さんはペースメーカーと共に日常を送ることとなります。手術・退院後患者さんがセルフモニタリングできるように支援が必要です。