消化器除染が基本!急性薬物中毒の患者への対処法

消化器除染が基本!急性薬物中毒の患者への対処法

急性薬物中毒の多くは、自殺目的などで大量服薬することです。子どもが誤ってたばこなどを食べたり、薬を飲み込んだりすることでも起こります。薬物中毒の対処についてまとめてみました。

薬物の特定

一時救命と並行して、中毒の原因になっている薬物が何かを調べます。内服した薬物の種類、量、経過時間を特定することが、治療を考えるうえでとても重要になります。

患者さんの近くに薬の空きびんや空シートがあれば、特定に役立ちます。また、他の薬やアルコールを摂取することで有害になる場合もあるので、これらの摂取が無かったかも確認します。

消化器除染

消化管内に入った毒薬物を除去するため、胃洗浄や下剤・活性炭投与をしたり、吐かせたりすることを、消化器除染といいます。

胃洗浄は聞き馴染みがあるかもしれません。薬物中毒の時によく使われるイメージがありますが、いつでも行うわけではなく、禁忌となる場合や効果が無い場合もあります。

胃洗浄は口から胃の中に太いチューブを挿入し、体温程度のお湯の注入・排出を繰り返す方法です。左側臥位で頭側を15度程度下げ、十二指腸への毒薬物の流入を防ぎ、誤嚥を防ぎやすくします。

成人で1回に200~300ml、全部で5~20l用いて、排液が透明になるまで洗浄を繰り返します。

胃の中に毒薬物が残っている服毒後1時間以内でないと効果がありません。体への負担もあるので、「服毒後1時間以内で毒性の高い物質を大量に摂取し、致死量以上が吸収される可能性のある時」というのが胃洗浄を使う条件になります。

誤嚥や窒息につながる可能性のある処置なので、誤嚥した場合に重い肺炎を起こすような毒薬物を飲んでいる時は消化器除染を行うことはできません。石油製品や有機溶剤などがこれにあたります。

また、消化管を傷つける可能性がある場合も禁忌となります。強酸・強アルカリなどの腐食性毒物または鋭利な物を飲み込んだ場合や、胃の手術や切除をした後などです。食道静脈瘤などがあって、大量出血の危険がある時も避けます。

消化管除染以外の処置

消化管除染は使える場面が限定され、体への負担や危険も大きい処置です。そのため最近はあまり行われなくなっています。代わりに、活性炭の投与が行われています。

活性炭はさまざまな薬物を吸着し、体外に排出します。副作用が少ないのも特長です。

精神的なケアも大切

薬物中毒の多くは服毒自殺目的のものです。治療の結果体は回復しても、心はまだ癒えていないかもしれません。

入院中は精神的な傷にも配慮しながら接するようにします。退院後も、精神科や心療内科などで、心のケアを継続的に受けることが大切です。

最後に

いかがでしたか?薬物中毒についてまとめてみました。薬物中毒に有効な消化管除染は、1時間以内に行わなくては効果が薄く、飲んだものによってはしない方がよい場合もあります。

いつ、何を、どれくらい飲んだかを特定することが大切です。体の健康だけでなく、心も回復できるように、サポートしていきたいですね。


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