ホントにあったCVポートの珍しい合併症!聞いてほしい看護師体験談
学生さん、新人看護師さん、新しい分野にチェレンジする現役看護師さん問わず、CVポートを取りつけている患者様のケアや、看護技術についての疑問や質問はとても多いのです。
それだけ、沢山のCVポート患者さんがおられ、看護する機会も増えていることを表していると思います。
- 観察項目?
- 合併症の種類と早期発見?
- 手術について?
- CVポートの構造?
- 穿刺の技術について?
- それとも、医師が穿刺するか看護師が穿刺するか?他の病院はどうしてるの?
という疑問まで様々です。
今回は、教科書に載っているような話は抜きにして、私が実際体験した「珍しいCVポートの合併症」について紹介します。
CVポートの看護に何が必要なのか、ちょっと考えてみるきっかけになるはずです。ぜひ参考にしてみて下さい。
癌のターミナル、高齢、奥さんと二人暮らしのMさんとCVポート
大腸がんの術後、再発転移でCVポートを装着し、抗がん剤療法をされていたMさん。
私がかかわったのは、訪問看護でのことです。
一連の治療で入退院を繰り返されていました。70代後半というご高齢であり、手術後の再発というご自身の病気を受け止め、「最後は静かに家で迎えたい、病院は嫌だ」という強い意志を持って在宅療養を選択されました。
訪問診療、訪問看護を受けながら、体調管理を中心にマイペースで生活されていました。
がんの再発とはいえ、年齢的に急激に病状が悪化する訳ではなく、食べられるだけ食べ、ゆったりと好きな本を読んだりしながら生活しておられました。
私たちも、この調子でいつまでもいけそうな気がしてしまうほどでした。
認知症の進行、そして徐々に食べられなくなった
ある時自宅内で転倒したことをきっかけに、ベッドにいる時間が長くなっていきました。そして、少しずつ認知症の症状が進行して行きました。
食事量は減り、点滴も拒否、徐々にるい痩(痩せてくる)が進行していきました。
奥さんやご家族は、「お迎え来たらスッと楽に行ってもらえたら本人は喜ぶでしょう」という温かい見守りをしてくださっていました。
奥さんからの電話「看護師さん、お父さんの胸からなんか出てる」!?
ある時、訪問看護ステーションに奥さんから電話が。
奥さん:「看護師さん、お父さんの胸からなんか出てる」
私:「えっ?何が出てるの」
奥さん:「分からないの、なんか機械みたいな」
すぐにお宅に急行しました。
出ていました、CVポートが体外に。
皮膚が無残に掻きむしられ、皮下にあるはずのCVポートがむき出しの状態です。幸い、奥様の報告が早かったので、カテーテルが抜けて大量出血、や感染兆候はありませんでした。
体外に露出したCVポート、その理由は
極端にるい痩の進んだMさんの皮膚は脆く、薄く、CVポートの形がくっきりわかる程になっていたのです。
認知症の進行したMさんは、自分がCVポートを植え込んでいることを忘れてしまっていたのです。
なにか、異物感を感じたMさんは、CVポートの部分を掻きむしって突起物を取ろうとしてしまった結果、皮膚が傷ついてCVポートが体外露出してしまったのです。
認知症患者さんとCVポート、看護について思う事
むき出しの状態では、重篤な感染症を起こす可能性があるため、近くの病院に連絡を取りCVポートの除去と皮膚縫合の処置をして頂くことになりました。
この経験から、CVポート装着後、極度にるい痩が進み、認知症のある患者様には十分ご家族や医師と話し合ったうえで必要と判断すればCVポートの部分を保護したり、手にミトンを装着したりするようになりました。
ご自身が「CVポート」を認識していない状態になったときが危険なことを痛感した事例です。
まとめ
いかがでしたか?今回は私が経験したCVポートの珍しい合併症についてご紹介しました。長い看護師経験の中で、体外露出はこの1件のみなので、かなり珍しいケースだと思いますが、今後の参考にして頂けたら嬉しいです。