バイタルサインの基準値、正常値と略語などを紹介

バイタルサインの基準値、正常値と略語などを紹介

バイタルサインの詳しい記事をまとめました。こちらも参考に。
【保存版】知っていますか呼吸回数の正常値、バイタルサインは呼吸回数まで測定しよう

「バイタル」を測ることは看護の基本となります。学生の時にもしっかりと学習したバイタルサインですが、今一度バイタルサインについて復習をしてみると新たな発見があるかもしれません。今回はバイタルサインの基準値、略語などを紹介します。

1.バイタルサインとは

バイタルサインとは「生命徴候」のことで、人が生きていることを示す証となるものです。

臨床ではバイタルサインは通常、血圧、脈拍、体温を測定しますが、本来はそれに呼吸数、意識レベルを加えた5項目となります。

2.血圧(BP)

血圧は血管内の血液が示す圧力をいいます。血圧は英語でblood pressureですので、「BP」と略されます。

血圧は心臓から送り出される血液量である心拍出量と血管の固さである総末梢抵抗によって決まります。血圧の異常がある場合、心拍出量と総末梢抵抗のいずれかもしくは両方に異常があるということになります。

日本高血圧学会が示す高血圧の基準値は140/90mmHgです。ちなみに日本人間ドック学会は147/97mmHgまでを正常とするという発表をして話題となりましたが、日本高血圧学会の基準値を採用している施設が多いようです。

病院・施設では血圧が低い場合も緊急を要することがあります。なんらかの原因でショック状態となったときは、血圧が下がります。

ショック時の血圧としては収縮期血圧が90~80mmHg以下となったときを指すことが多いですが、普段から血圧が高い人の場合はそれよりも高い値でもショック状態となっていることがあります。

普段の血圧よりも40~50mmHg以上低い場合は注意が必要です。

3.脈拍(P)

脈拍は血液が拍出されるときに、潜在性の動脈に触れて感ずる波動のことをいい、1分回に拍動する回数で示されます。

脈拍は英語でPulse(ドイツ語ではpuls)ですので、「P」と略されます。カタカナではドイツ語にならって「プルス」と呼ぶ場合も多いです。

脈拍は電子血圧計やパルスオキシメーターで自動測定されますが、正しく計測するには1分間実測で測ることが望ましいです。

特に不整脈や欠滞がある場合は実測の必要があります。脈拍は年齢によって基準値が異なります。

年代 単位(回数/1分間)
新生児・乳児 110~140
小学生・子供 70~110
中高生 50~100
一般成人 50~90

4.体温(KT、BT)

臨床では体温は腋下で測定することが多いです。体温の略語はKT、もしくはBTと記されます。

BTは英語のbody temperature、KTはドイツ語のKorpertemperaturの略です。日本人の平均体温は36.6℃で、新生児の場合は37.0~37.2℃くらいです。

高齢者で平熱が低く、小児では高い傾向にあります。感染症法では37.5℃以上を発熱、38℃以上を高熱として定めています。体温については個人差がありますので、平熱からアセスメントすることが大切になります。

5.呼吸数(R、RR)

安静時の1分間の呼吸回数を計測します。呼吸数は英語でrespiratory rateですので「R」もしくは「RR」と略されます。

呼吸数は環境や意識によって左右されますので、患者さんに気づかれないように測定することがポイントになります。

呼吸音を聞きながら測定する、他のことをしているように見せかけて胸郭の動きから測定するなどの方法があります。

このときに、呼吸様式、努力呼吸の有無などもあわせて観察します。呼吸数の基準値は成人で15~20回/分です。

6.意識レベル

意識レベルに問題がない場合は、カルテに記載することも少ないですが、意識レベルに問題がある場合は必須の項目になります。

意識レベルの評価の代表的なものにはジャパン・コーマ・スケール(JCS)とグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)があります。

JCSは日本で主に使われ、「刺激しなくても覚醒している状態(Ⅰ)」「刺激すると覚醒している状態(Ⅱ)」「刺激しなくても覚醒しない状態(Ⅲ)」に分かれ、数字が大きくなるほど重症になります。

緊急時は「レベルⅢケタです」といった報告で、概ねのレベル状態を把握することができます。

JCSの分類

刺激がなくとも覚醒している状態

1 大体意識清明だが、いまいちはっきりとしない
2 見当識障害がある(時間、人、場所などが不明)
3 自分の名前や生年月日などが言えない

刺激をすると覚醒する状態(刺激をやめると意識がなくなる)

10 言葉かけで容易に開眼する(合目的的な運動や言葉が出るが間違いが多い
20 大きな声・身体を揺さぶると反応する(簡単な命令に応ずる)
30 痛み刺激、言葉かけの両方を繰り返すと開眼する

刺激をしても覚醒しない状態

100 痛み刺激に対して、払いのけるなど拒否反応をする
200 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
300 痛み刺激にまったく反応しない

GCSは「E(eye opening開眼)」「V(best verbal resoinse 最良言語反応)」「M(best motor resuponse 最良運動反応)をそれぞれ評価し、数字が大きくなる方が意識レベルが低くなり、それぞれの項目をE2V2M4のように表記します。

日本ではGCSは脳外科疾患患者さんの経時的な評価として使われることが多いようです。

GCSの分類

E:開眼(Eye Opening) E
自発的に開眼をする
音声により開眼をする
疼痛により開眼をする
開眼をしない
V:発語(Best Verbal Response) V
命令に従うことが出来る
会話に混乱が見られる
言語に混乱が見られる
理解不明の声を発する
発語をしない
M:運動機能(Best Motor Response) M
命令に従うことが出来る
疼痛部の認識が可能
四肢の屈曲反応、逃避
四肢の屈折反応、異常
四肢の伸展反応
全く動かない

最後に

いかがでしたか?バイタルサインは異常を発見するきっかけとなるものです。基準値から外れたときに、何がその原因となっているのかと考えることが大切です。

また、最近では電子血圧計の使用により、患者さんの肌に直接触れなくても測定できるようになりました。

しかし、患者さんに直接触れることでわかることもたくさんありますので、わたしはなるべく患者さんに手を当てるようにしています。

「手当て」という言葉もあるように、私たち看護師の手は患者さんを看る大切な道具のひとつなのではないでしょうか。


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