さまざまな病原体とスタンダードプリコーションとは
- 2015/9/1
- ノウハウ・ハウツー
- スタンダードプリコーション
さまざまな病原体とスタンダードプリコーションとは
感染症は、さまざまな経路から私たちの体内に侵入してきます。感染症を引き起こす病原体には、どのようなものがあるのか、感染を防ぐにはどのような対策を取ればいいのかまとめてみました。
さまざまな病原体
病原体は、体の構造や増え方によって分類されています。
・原虫…真核生物といって、ヒトと同じように細胞内に核膜に包まれた角があり、核の中にDNAやミトコンドリア、小胞体を含む生物です。大きさは1~80μmで、比較的大きめです。マラリアやアメーバ赤痢の原因になります。
・真菌(カビ)…原虫と同じく、真核生物です。大きさは様々で、白癬症やカンジダ症などの原因になります。
・細菌…核膜やミトコンドリアを持たない原核生物です。大きさも形状もさまざまです。MRSA感染症、結核、オウム病、梅毒など多くの病気の原因になります。
・ウイルス…一般に生物には含みません。20~250nmと細菌や原虫より小さいです。HIV感染症(エイズ)やインフルエンザの原因になります。
ウイルスは細胞を持たず、生物ではありませんが、単純な遺伝情報だけ持っています。
菌が正常な細胞を栄養として取り込み、自分が分裂して増えていくのに対し、ウイルスは正常な細胞に侵入して破壊し、自分を複製して増殖します。
このように、大きさも生息場所も様々な病原体ですが、感染予防の基本は同じです。この基本を、「スタンダードプリコーション」と呼びます。
スタンダードプリコーションとは
難しそうな言葉が出てきましたが、大切な考え方なのでしっかり覚えましょう。
日本では「標準予防策」とも呼ばれています。アメリカで生まれた、院内感染対策全般の基本となる概念です。
「感染症の有無にかかわらず、患者の湿性生体物質を全部感染性があるとみなす」という考え方が基本となっています。
対象となる湿性生体物質は、血液の他、便や尿などの排泄物、吐物、鼻水、唾液、母乳、精液、膣分泌物、粘膜など広範囲にわたります。一方汗は除かれます。以下の4点が示されています。
- ①患者の湿性生体物質で衣服が汚染される可能性があればガウンやプラスチックエプロンを着用します。使い捨てできるものであることが重要です。
- ②飛沫汚染が起こりうるときにはマスクやアイ・プロテクションを着用します。
- ③湿性生体物質に接触する時は手袋を着用します。
- ④湿性生体物質に触れた後は手袋の着用の有無に関わらず、手洗いをします。
「この患者さんは感染症ではない」と安心せず、すべての患者さんについて同様に感染症対策を講じるという点が重要です。
感染症の多くは湿性生体物質から感染します。医療者は自分自身が感染する危険もあるため、スタンダードプリコーションの実践が大切です。
身近なスタンダードプリコーション…咳エチケット
最近、咳エチケットという言葉をよく聞くようになりました。特にインフルエンザが流行する時期に言われますね。
咳エチケットとは、かぜやインフルエンザなど、すべての呼吸器感染症の感染拡大を防止するために心がける行動のことです。
健康なようでも、知らないうちに細菌やウイルスに感染して、咳やくしゃみで他の人に広げている可能性があります。
咳・くしゃみが出たら、マスクを着用したり、他の人から顔をそむけてティッシュなどで口と鼻を押さえるなどの対策を取るようにしましょう。
鼻汁や痰が付いたティッシュはすぐに捨てて、手を良く洗うことも大切です。病院だけでなく、様々な場所で心がけたいスタンダードプリコーションです。
最後に
いかがでしたか?病原体の種類や感染予防の基本についてまとめました。スタンダードプリコーションはとても重要な考え方なので、確実に覚えておきたいですね。お役に立てれば幸いです。