まだA→B→Cと思ってない?一時救命の正しいC→A→B
意識のない人を発見したら、人や物を集めながらもできるだけ速やかに一時救命を行うことが求められます。どのような順で行うか、流れをまとめてみました。
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一時救命の優先順位
まずは循環の確保が大切です。胸骨圧迫(心臓マッサージ)を最優先に行います。循環を確保してから気道確保、そして人工呼吸という順で進めていきます。
循環確保(Circulation)、気道確保(Airway)、人工呼吸(Breathing)という流れなので、頭文字をとってC→A→Bと覚えましょう。
かつてはA→B→Cの順でしたが、アメリカ心臓学会(AHA)がまとめているガイドラインの最新版で変更されています。さまざまな研究から、胸骨圧迫による循環確保を最優先すべきだということがわかってきたためです。
胸骨圧迫は、以前は「心臓マッサージ」と呼んでいましたが、「胸を押して血液を循環させる」という意味をより明確にするために名称が変更されています。
心肺蘇生法の有効時間
心肺停止になった場合、3~5分以内に心肺蘇生を行わないと、脳の壊死が始まるといわれています。5分たってしまうと助かる確率が激減し、助かったとしても脳に障害が残る危険が高くなります。
倒れている人に反応がない、呼吸をしていない、または死戦期呼吸という不規則な呼吸がみられる場合は、直ちに心肺蘇生を行わなくてはいけません。いかにスピードが重要かということですね。
胸骨圧迫
最初に胸骨圧迫を行います。手を組んで、胸の真ん中を圧迫します。手の付け根で、深さは成人だと5cm以上、しっかり押します。乳児や小児に対しては胸の厚みの3分の1程度です。
1分間に100回以上の速さで、まずは30回圧迫します。肘を伸ばして垂直に押せば体重がかかりやすく、長時間やっても疲れにくいです。
気道確保
胸骨圧迫の次に、気道確保を行います。意識のない場合は舌が喉の奥につまっていたり、気道に異物があったりして窒息の恐れがあります。それを除くために、頭を後ろにしてあご先を上に挙げます。
この状態を「頭部後屈あご先挙上」と呼びます。ただし、首を怪我している可能性のある人の場合は、頭部を後屈させると脊髄を損傷する恐れがあります。
この時は下顎挙上という、頭部を後屈させずあごを引き上げる方法をとります。
人工呼吸
人工呼吸は頭部後屈あご先拳上の状態で行います。気道を確保したまま患者さんの鼻をつまんで、口から空気が漏れないようにゆっくり1秒かけて吹き込みます。
胸骨圧迫30回の後に2回行います。この時、患者さんの胸が上がっていることを確認してください。
患者さんの肺が膨らむよりも吹き込むのが早くなりすぎると、胃に空気が入って嘔吐の原因になるので、ゆっくり胸の動きを見ながら吹き込むことが大切です。
また、息を多く吹き込むイメージがあるかもしれませんが、吹き込みすぎることで肺を傷つけたり胃に空気が入ったりする心配もあります。普通に息を吐き出す程度の量を吹き込みます。
口対口の人工呼吸には心理的な抵抗を持つ人もいますし、感染症の恐れもあります。感染防護具を使用して人工呼吸を行うことが、ガイドラインで推奨されています。
同じガイドラインの中で、何らかの理由で人工呼吸を行えない、行いたくない場合は省略してもいいということも示されています。
人工呼吸への抵抗感で救命活動自体をためらってしまうよりは、胸骨圧迫だけでも行った方が救命効果が高いとされています。
最後に
いかがでしたか?一時救命の流れについてまとめてみました。もともとA→B→Cだった手順を見直し胸骨圧迫を優先するようになったこと、人工呼吸を省略してでも速やかに胸骨圧迫をすべきであるとされるようになったことから、その重要性がよくわかりますね。一時救命は時間との戦いです。
いざという時にスムーズに行動できるよう、流れや重要性を頭に入れておきたいですね。