看護理論ってなに?精神看護の母「ヒルデガード・ペプロウ」に聞いてみる
- 2016/2/28
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- ヒルデガード・ペプロウ, 看護理論
看護理論ってなに?精神看護の母「ヒルデガード・ペプロウ」に聞いてみる
看護についての考えをまとめたものを、看護理論といいます。19世紀頃から、看護に携わる多くの人が看護理論をまとめ、後世の看護に影響を与えてきました。
ここでは、ヒルデガード・ペプロウという人物がまとめた看護理論について見ていきます。
ヒルデガード・ペプロウとは
ヒルデガード・ペプロウ(1909~1999)は、アメリカの看護師です。「精神看護の母」と呼ばれた人物で、長年大学院で精神看護を教えました。
代表的な論文集に、『人間関係の看護論』(1952)があります。精神看護に関わっていく中で、「看護とは、患者と看護師間の相互作用による段階的・継続的な人間関係のプロセスである」として、人間関係というものに注目しました。
それまで病気や怪我の対処だけを考えていた看護の場においては、人間関係に重点を置くというのは画期的なことでした。
ペプロウの4つのプロセス
ペプロウは、望ましい患者さんと看護師の関係は、次の4つのプロセスを経るとしています。
第一段階は、方向付けです。初めて出会う患者さんと看護師が、患者さんの抱えている問題を認識して共有し、その解決に向かって歩き始めます。
怪我や病気で問題を抱えている患者さんは、専門職である看護師の援助を求めています。看護師は、患者さんが問題を解決できるようになるために必要なことを丁寧に説明し、同じ目標を持てるようにします。
第二段階は、同一化です。患者さんは、自分の要求に応えてくれそうな看護師を選び、同一化して関係を作ろうとします。
最初は打ち解けられなかった患者さんでも、次第に看護師に信頼を置くようになり、不安な気持ちを打ち明けてくれたり、質問をしてくれたりするようになってきます。
第三段階は、開拓利用です。患者さんは看護師の援助などを十分に利用し、問題を解決し、目標を達成しようとします。
回復してくるにつれて患者さん自身でしてもらう処置も増えてくるので、その方法を看護師に聞いて習得したり、退院後の生活で気を付けることは何か質問したりして、問題解決に向けて看護師の力を借りながら進んでいきます。
第四段階は、問題解決です。患者さんは独り立ちする能力を身につけ、目標は新しいものへと変化します。退院後の生活などについて自分で調べたり、自主的なトレーニングを行ったりします。
看護師が果たすべき役割
ペプロウは、患者さんに対して看護師がどのような役割を果たせばいいかということも定めています。
一つ目は、未知の人の役割です。患者さんの中には、最初から前向きに治療を受けることができない方もいます。
そのような方に対して、無理に話をさせたり偏見を持ったりせず、あるがままの患者さんを受け入れることが大切です。
二つ目は、情報提供者の役割です。患者さんにとって必要な情報を提供したり、質問に適切に返答したりします。
三つ目は、教育者の役割です。患者さん自身で行ってもらう治療について、ただやり方を教えるだけではなく、患者さんが十分理解できるように援助します。
四つ目は、リーダーの役割です。家族会のような集団の中で、人との相互作用を用い、集団目的を作って目標達成に向かうよう援助します。
五つ目は、代理人の役割です。「娘に似ている」「お母さんみたい」などと言われたことのある人もいるかもしれません。患者さんは看護師に誰かの代理人としての役割を課す場合もあります。
このように患者さんが考えることを止めてもらうことは難しいですが、例えば娘のように思っている看護師から何か言われても真面目に受け止めてもらえないなど、看護に支障をきたすようになっては困りますね。
一人の看護師として見てもらえるよう、違いを確認することが必要になることもあります。
六つ目は、カウンセラーの役割です。患者さんが今の場面で患者さん自身に何が起こっているのかを十分理解し記憶できるよう、援助の手を差し伸べることです。
最後に
いかがでしたか?ペプロウの看護理論についてまとめてみました。患者さんの問題を一緒に解決していくには、段階を踏んで信頼関係を築いていくことが大切です。
最初から看護師を信頼してくれる患者さんばかりでもありません。心配になるかもしれませんが、少しずつ目標を共有できるように働きかけていきましょう。