衣服を無理に脱がせない!重度の熱傷患者の対処方法と注意点

衣服を無理に脱がせない!重度の熱傷患者の対処方法と注意点

熱傷の患者さんが救急搬送されてきたら、できるだけ早く重症度の判別を行い、必要な対処を決めていきます。

重度の熱傷を負った患者さんの場合、どのような処置や治療が必要になるでしょうか。

衣服を無理に脱がせない

熱傷で搬送されてくる患者さんの中には、服の上から炎などに当たって熱傷を負っている方も多くいます。

この時、無理に衣服を脱がせると、傷を広げたり水泡をつぶしたりして、さらに重症化する恐れがあります。脱がせずに上から冷水をかけて搬送して、後からハサミなどで切り開いて治療を行います。

気道の確認

重度の熱傷の患者さんは、皮膚表面だけでなく、炎や煙を吸い込んで気道にも熱傷を負っている可能性があります。

広範囲に及ぶ重症の熱傷の場合、時間が経過してから徐々に悪化していくことが多いため、最初は大丈夫そうでも数時間後に気道に浮腫が起こり、閉塞してしまう危険があります。

そのため、気道熱傷の疑いがないかを確認し、もしあれば挿管して気道確保するなどの対処を最初に行います。顔面に熱傷がないか、鼻毛が焦げていないかなどで判断します。

壊死組織除去と植皮手術

熱傷が皮下組織にまで達したⅢ度熱傷が直径5cm以上ある場合は、壊死した組織を取り除く必要があります。壊死組織から感染が広がって敗血症になる恐れがあるためです。

四肢の場合は切断しなければならなくなることもあります。重症化すると多臓器障害に陥ってしまうこともあるため、できるだけ早く壊死組織を除去します。

植皮手術は、可能な限り自分の皮膚を使いますが、不足した時のために遺体の皮膚を凍結保存しているスキンバンクを利用することもあります。

輸液の投与

熱傷では、細胞が壊れたり、熱傷部位から血管の透過性を高める物質が放出されたりすることによって、全身の血管から血漿が漏れ出してしまいます。

そのため点滴を大量に行って水分を補い、ショック状態に陥らないようにします。正常な経過の患者さんでは、36~48時間後に尿量が急激に増えます。

この変化をリフィリングといいます。急な変化によって心臓や肺に負担がかかるため、リフィリングがみられたらすぐに輸液の量を減らさなくてはいけません。

体温を保つ

患者さんの体を温めることも大切です。熱傷といえば冷やすというイメージがあるかもしれません。

しかし、重症の患者さんの場合は皮膚が失われて体温調節ができなくなっていることに加え、体から流失した水分の気化熱のため、体温が下がりやすくなります。

このため、輸液を温めたり電気毛布などを使ったりして患者さんの体を温めます。

感染予防

広い面積に熱傷を負っている患者さんは、細菌から無防備な状態です。感染を防ぐため、医師や看護師は滅菌ガウンを着用して治療に当たります。

治療をする部屋も特別な空調で空気を正常に保っています。創を清潔に保ち、抗菌薬を投与して、厳重に感染対策をすることが重要です。

最後に

いかがでしたか?熱傷の患者さんの治療についてまとめてみました。体を冷やすのではなく温めるというのは、意外に思った方も多いのではないでしょうか。

熱傷によって皮膚を失った患者さんは、体の基本的な機能も十分働かなくなるため、気道確保や輸液、保温、感染予防など、多くの処置が必要になります。

一つ一つが患者さんの生命維持のため重要なものなので、間違いなく行うようにしましょう。


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