人工呼吸器でよく使う設定と注意するべきこと
人工呼吸器の設定や調整は医者が行う病院が多いかと思います。
しかし、緊急時や時間外には医師の指示のもと、看護師が設定変更をする場合もあります。今回はいざというときに知っておくと安心な人工呼吸器の設定についてご紹介します。
1.人工呼吸器の初期設定値
人工呼吸器の初期設定例は下表のようになります。
人工呼吸器の設定は動脈血ガス酸素分圧(PaO2)並びに動脈血ガス二酸化酸素分圧(PaCO2)をモニタリングしながら変更していきます。
換気様式が従量式であれば一回換気量(VT)と呼吸回数(f)、もしくは吸気流速とI:E比、従圧式であれば最高圧レベル(PC)と吸気時間を設定し、その他PS圧を随時調整していきます。
人工呼吸器の初期設定例
項目 | 設定値 |
---|---|
一回換気量 | 10~15ml/kg |
呼吸回数 | 10~15回/分(成人) |
I:E比 | 1:02 |
吸入気酸素濃度(FiO2) | 50%~60%以下(厳密には症例によって異なる) |
PEEP | 症例により選択(3~5cmH2O) |
トリガー感度 | -1~-2cmH2O |
2.設定の考え方
4つの考え方にまとめましたので参考にしてください。
①換気モード、様式を決める
まず最初に呼吸状態、病態を考え換気モード、換気様式を決定します。
自発呼吸がなければA/C(CMV)とし、自発呼吸はあるがそれだけでは十分でないときはSIMV、自発呼吸がある場合はSPONT(CPAP)が基本です。
換気様式としては換気様式として、換気量と吸気フローを設定して換気を行う従量式(VC)と吸気圧と吸気時間を設定して行う従圧式(PC)があります。
従圧式は最高圧レベルと吸気時間、I:E比を設定し分時換気量を決めていきますが、肺コンプライアンスが低い場合は分時換気量が保てないリスクもあり、随時PaO2もモニタリングしていく必要があります。
②FiO2を決める
導入時はFiO2は1.0からスタートしますが、高濃度酸素による肺障害を防ぐため24時間以内に0.6~0.5程度まで徐々に下げていきます。
PEEPは通常2~4cmH2Oで高くても、重症ARDSなどでも20cmH2Oは超えないように設定します。
PEEPについてはこちらにより詳しく解説しています。
PEEPってなに?看護師を悩ます人工呼吸器用語解説します
③VTを決める
次に一回換気量を決めていきます。「分時換気量=1回換気量(VT)×呼吸回数(f)」となるので、十分な分時換気量をフォローできるようにしたうえで,VTが6-10 mL/kg(体重は理想体重で換算)になるように設定します。
実際にはVTが目標値となるように呼吸回数、呼吸時間の設定を調整していくという作業になります。
④PS(プレッシャーサポート)を決める
次にVTと呼吸パターンを見ながら十分な換気量が得られるようにPSを設定します。このときに、気道内圧が30~40cmH2Oが超えないように注意します。気道内圧が高くなりすぎると圧損傷などの危険があります。
3.人工呼吸器導入時の換気モード
導入時の急性期には自発呼吸がないもしくはごく弱いときが多く、換気モードはA/C(CMV)とします。
A/C(CMV)は設定された換気量もしくは圧、吸気フロー、吸気時間で換気を行う強制換気のみのモードです。
設定としては一回換気量(VT)と換気回数(f)を決めます。その他のパラメーターとして、FiO2とPEEPを設定します。
4.自発呼吸がある場合の換気モード
自発呼吸が出現した場合、A/C(CMV)モードではファイティングが起こりやすくなってしまいます。
そこで、自発呼吸がある場合は強制換気と自発換気を組み合わせたSIMVもしくは自発換気をサポートするSPONT(CPAP)を使用する場合が多いです。
SIMVやSPONT(CPAP)にプレッシャーサポート(PS)を付加することで吸気時の加圧をサポートすることができます。
SIMVの初期設定の例
- FiO2 1.0
- 1回換気量 6~10ml/kg (400~500mL)
- PEEP 3~5cmH2O
- I:E=1:2
- ピーク気道内圧 40cmH2O以下
- 呼吸数 拘束障害14~25回 閉塞障害 6~12回
- PS 10~15cmH2O
最後に
いかがでしたか?人工呼吸器の設定は奥が深く難しいことも多いです。まずは設定の仕組みを理解することで、アラームや緊急時の対応も自信を持ってできるようになると思いますよ!