滴下速度の計算方法と点滴・輸液投与の注意点
病院では、多くの患者さんが輸液の投与を受けています。輸液には、どのような役割があるのでしょうか。
また、どのようなことに注意して輸液の投与を行えばいいのでしょうか。ここでは、輸液の役割や注意点についてまとめてみました。
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輸液とは?
人間の体は約60%が水分でできています。
健康な人は食べ物や飲み物から水分や栄養分を摂り、自然にバランスを保っていますが、経口摂取が難しい・またはできない状態の患者さんだと十分に水分を摂ることができなくなってしまいます。
水分の量や電解質が変化すると、細胞に異常が起こるので、これを補うのが輸液の主な役割です。
他にも、栄養を補給する栄養輸液や、抗菌薬などの投与、静脈ラインの確保などの役割もあります。
術後の急変時に備えるためなど、ラインを確保しておくために維持液を入れて、生体の水分量や電解質を一定の状態に保ちます。
適正な滴下速度と計算方法
点滴が体内に入ってくる速度を、滴下速度と呼びます。点滴を観察してみると、滴下が早い人も遅い人もいますよね。
実は、輸液の内容や患者さんの状態で、適正な滴下速度が異なります。
滴下速度が速くなりすぎると、血管の中に一気に水分が入ることになるため、心臓に負担がかかり急性心不全や肺水腫を引き起こすことがあります。
高齢の患者さん、腎不全の患者さん、手術直後の患者さんは、特に注意が必要です。輸液の種類で特に気を付けたいのが、カリウム製剤です。
カリウムは体にとって大切な物質ですが、適正量の範囲が3.5~5.0mEq/Lと狭く、5.0mEq/Lを超えると高カリウム血症という状態になってしまいます。
重度になると、致死的不整脈を起こして心停止する場合もあります。必ず濃度を確認して原液で投与しないこと、適正な滴下速度を保つことが大切です。
では、滴下速度はどのように計算すればいいのでしょうか。
1mLあたり何滴かは、輸液セットごとに決まっています。それぞれのセットの包装に「1mL≒20滴」などと書いてあります。
また、患者さんごとに作成される注射実施表で、「生理食塩水 120mL/時」などと医師からの指示が書いてあるので、これをもとに1分あたりの量を計算し、滴下速度を調整します。
この例なら、1時間に120mL=1分間に2mL投与するためには、40滴を1分間に滴下する必要があります。だいたい3秒に2滴落ちるような速度に調整すればいいですね。
一般的な輸液は1mL=20滴のものが多いので、慣れてくると1分間の滴下数=1時間あたりの輸液量(mL)÷3で計算する看護師も多いようです。ただし、輸液セットごとの1mLあたりの滴下数を確認することは、毎回怠らないようにしましょう。
点滴中の観察点
点滴中は、患者さんの状態や滴下速度に変化がないか、観察することが大切です。静脈炎の兆候(刺入部周辺が赤くなったり腫れたりすること)がないか、動悸や呼吸困難、不快感がないか、全身状態を確認します。
また、滴下速度は体勢を変えただけでも変化してしまうので、こまめにチェックするようにします。滴下速度が速すぎても危険ですが、遅すぎても効果が十分出ないことがあるので、必ず正しい速度で実施できるようにしましょう。
最後に
いかがでしたか。輸液の目的や滴下速度についてまとめてみました。滴下速度の計算は、スムーズにできるようにしておきたいですね。
患者さんの治療や回復のために欠かせない点滴ですが、正しくできないと体に悪影響を及ぼすこともあります。患者さんにも目的を説明して、適正に投与できるようにしましょう。